羣青（上・中・下巻）【全3巻】2人の女性の逃避行

タイトル名：羣青（上・中・下巻）
作者名：中村珍
出版社：小学館

この話は二人の女性が犯罪を犯した直後から始まります。夫からの暴力により体中が青痣だらけになり、耐えきれず夫の殺人を持ちかけた「私」と、「私」に対して特別な感情をもつレズビアンの「あーし」、この2人が殺人を実行した後の逃避行を、当時２２歳だった作者が描きます。

「私」はレズビアンではなく、「あーし」を上手いこと利用した結果こうなったのですが、「あーし」はそれも理解した上で『あーしの人生なんかさ、あーたがニコッとすりゃボロボロになるんだよ』と語ります。

この発言から始まる本編ですが、その後はただひたすらに終わりに向かい逃走します。警察からだけではなく、自分たちのまだ清算していなかった過去や環境からも追い込まれます。

「あーし」も「私」も心身共にボロボロになり二人の関係も悪化していきますが、その分絆も強まります。「あーし」の過去の女なども登場し、レズビアンというものを深く考えさせられます。

「私」と「あーし」の出会いは高校生の頃で、その頃からすでに「私」は不幸な環境の中に居て「あーし」は彼女に魅かれていたのです。思えばその時からこの結果は決まっていたのかもしれません。

本当に救いのない話で、よくここまで描けるなと感心しました。自分勝手な主人公たちですが、それでも目を離さずにはいられないそんな物語です。

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