奇子【全3巻】旧家を舞台にしたドロドロの愛憎劇

作品名：寄子
著作者：手塚治虫
出版社：小学館

第二次世界大戦後、GHQのスパイとなった天外仁朗。
久しぶりに実家へ帰ってみると、奇子（あやこ）という妹が生まれていました。表向きは年老いた両親が生んだ末の妹ということになっている奇子ですが、実は父が長男・市朗の嫁に生ませた私生児でした。

仁朗は、スパイとしてある男の殺人に関与した後、血のついたシャツを洗っているところを奇子に目撃されてしまいます。逃げる仁朗ですが、世間体を気にする天外家は口封じのために奇子を死んだことにし、土蔵へ閉じ込めました。

二十数年間も幽閉され、世間と隔絶されて育てられる奇子。真っ暗な土蔵の中で少女から女性へと成長し、歪んだ常識と愛情を持つようになってしまいます。天外家の中でも真面目で正義感が強かった三男・伺朗ですが、奇子を不憫に思い、求められるままに関係を持ってしまいます。

一方の仁朗は、自分のせいで死んだことにされている奇子へ、償いとして仕送りを続けていました。やがて土蔵の取り壊しが決まり居場所を無くした奇子は、荷物にまぎれて天外家を脱出し、仕送りを送る仁朗の元へと向かいます。

東北地方の旧家・天外家を舞台に、呪われた出生の奇子（あやこ）とその家族たちにまつわる愛憎を描くサスペンス。とにかくドロドロで複雑な家族関係です。
医師である手塚治虫ならではの切り口で「閉鎖された環境で育った少女はどう成長するか？」を考察した作品とも言えそうです。

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